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2007/02/27 (Tue) 絵板より転載
「仙台旅行」
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death note短編小説
カップリングなし。竜崎と松田の会話。
あとで色々直そうとは思いますがとりあえずup(20070520)
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メフィストでトテモ嬉しいので自慢。

視界の一点にアレが入った時、彼は自分の心拍数が脅威的な数に跳ね上がったことを自覚していた。
九十九髪の根元にじんわりとにじんだ汗が滲み、瘧(おこり)のように身体は震えた。最初、それを彼は生物が持つ原始的恐怖からと冷徹に自己分析した。が、まもなく彼はその判断を撤回した。
アレの事を周りの誰にも知らせる気になれず、それどころか自分でも驚くほどの酔狂な行動を取るに至った現状を見れば明白である。

彼は人間である故、感情もある。当然、怒りもあれば悲しみも喜びもあり、心的要因による身体変化も存在する。また、身体を動かせば心拍数、呼吸数は上昇するし、体温調節の為に発汗するという健康な人体における当然の機能を備えていた。
ただ、彼はその華奢な幼い体の中に素晴らしい繭を抱え込んでいて為に外部から分かるほどの変化はなかなか無かった。絹独特の光沢を放つハチミツを溶かしこんだかのような繭の中で羽をたたみこんでいるソレが、美しい蝶か、爛れる燐粉を撒くおぞましい毒虫かは他人はもちろん彼自信にもとってもあずかり知らぬ所であった。


薄汚れ裾のほつれたジーパンの裾を何回もロールし、色あせ襟の曲がったポロシャツにボロボロの野球帽を被った些か汚らしい格好で 彼はソッと大通りに出た。僅かばかり緊張で指を震わせながらも素知らぬ顔で辺りを伺う。モニター越しにならば四六時中見ている風景のはずだが、目の前にしてみると、毒々しい原色の装飾と車の騒音、子供の金切り声や諍いの声が溢れる町並みは別世界のように彼には見えた。ソレは常人が夜の静まり返った遊園地を見た時に感じるに違いない不思議な違和感や、どこか幻想的で現実離れしたモノのためであった。
多くの人々が行き来する歩道は人でごったがえしていて歩き辛い。頭一つ分、周囲よりも低い彼の視界はすっかり人間の壁に覆われてしまい、息苦しく、吐き出す息の白さに反して熱気さえ感じる。白い頬をピリピリと刺激する冷気とは対照的に脇の下や背中にはじっとりと不快な汗が僅かに浮かんだ。
しかしそれでも彼にとってそれは寧ろ好都合であった。
彼は隠密活動中であった故に。

人ごみの中をもどかしげに脚を進め、3ブロック程で脚を止め、逆光に立つ。目の前には、舗装された大通りとは違い、ひび割れ歪んだ石畳の隙間に湿った土としぼんだ草をチョビヒゲのように生やした裏通りが続くばかり。如何わしい類の看板たちが僅かに差し込む光の中で惰眠を貪っているとはいえ大多数の人間ならば眉を潜めたくなる場所である。ビルの谷間に窮屈に作られたこの空間は空気が滞っている。足を数歩踏み入れただけで道端にだらしなく出された生ゴミの悪臭やアンモニアが鼻につく。

リアルティな5感への刺激に不慣れな彼は 不遜な顔の上に少々の不快感をコーティングしつつ先へと急いだ。
(この路地を7ヤードと2フィートほど進めば…)
次第にはやる心に比例し足早になる。いつもとかわらないつもりでいるのは当人ばかりでついには駆け出さんばかりとなる。飛ぶように足を前に飛び出せば7ヤードはあっという間に終わる。

(あの画像は風景、角度からいってココのデータのはずだ)
足を止めた彼の視界の先にあるのは街の随所に設置された監視カメラの一つ。
彼の目だ。

初めて来たはずなのにすでに知り尽くしている。彼の目は世界中ありとあらゆる所にあり、依頼されたり、あるいは彼自身が必要と考えればどこだって見ることが出来たから。



この知り尽くした退屈な空間をグルリと彼が見渡し、その視線が一点で止まった。
灰色の滲んだ風景の一箇所に。

ソロリソロリと歩み寄り、どこか恭(うやうや)しげに、畏怖するかのように彼がソレを手に取る。
あいまいな中、一つだけ目が覚めるほど鮮やかに黒く。
黒い黒いノート。



気のせいか空から音がしたように思えた。
バサリバサリと大鷲が降り立ったかのような音が。

「やはりアナタでしたか。死神リューク」

「…ご苦労様です。その調査の完了後は…」
「中東におけるシンジケートに対しては…」
「…」



壁一面に埋め込まれたモニターはノイズに瞬きながらも青白い光で室内を照らしている。
床には様々な配線がミミズのように這い蹲り、人工物も有機物も全は1つのオブジェクトとして出来上がっていた。
この閉塞的な空間においてこれら全ては完成されたものであった。例えば、それは核の「手」という名の端末に弄ばれる「ブリキのオモチャ」に一つにしても例外ではなかった。この空間には一切の無駄がなく、そして不足もなかった。それほどまでに完璧であった。


その完璧な中でさらに完璧といえるもの最たるものが「核」であった。
核は仄暗い瞳に青い燐火を灯し、乱れ絡まる九十九髪を自らの指で嬲る…幽鬼の如き…電脳空間においていささかアナログ的、旧世界的な感覚を与える容貌を持った有機物であった。

彼は「L」という名称を持っていた。
「L」という世界の基盤部分に存在するオブジェクトであった。世界に約60億存在する末端端末たちと根深く繋がる存在であった。しかし、「L」から末端端末へのネットワークはあまりに複雑に絡み合っていた為、多くの端末達にとって彼は居ても居なくても構わない存在であった。
多くの端末達にとって水が蛇口から出るかは重要でも、どの水源から毎秒何リットル供給されているかが重要ではない事と同様であった。

60億の端末と繋がりながら彼は1人であった。
510,000,000,000,000平方センチメートルの領土の中、彼の最も近い端末である「手」が触れる事を許されていたのは僅か17平方センチメートルほどであった。
即ち、完璧なこの部屋である。


ただ、彼は世界の基盤の一つであると同時に有機物であり、かつ「人間」であった故にエラーを起こす事もありえた。完璧の崩壊である。完璧でありながら崩れ落ちる、その矛盾を引き起こすのはいつだって決まっていた。





ブリキのオモチャを抱えたまま不貞腐れたように横たわり、ふてぶてしい表情で、彼は部屋中のモニターを見続けていた。スピーカーから聞こえてくる世界各所からの報告を聞きつつ、それぞれに的確な指示をインカムマイクを通して与える。
どれだけ大量の情報を一度に取得しても、それらは彼の小さい灰色の脳細胞の中で的確に分類され、収納され処理される。彼のシナプス内には常に大量の信号が送られ続けていた。



『どうしました?L、溜息などついて』

マイクに拾われた意味のない呼吸は存外に大きかったようだ。

『疲れましたか?無理もありません』

理知的な女性の声をスピーカーごしに聞きながら、彼は無感動であった。
年若い彼を気遣う、幾分ゆっくりとした優しい声にもソレは同様であった。



「退屈です」
ただ一言呟いた声はあまりに小さすぎてインカムマイクに拾われることはなく、その極々僅かな空気振動は自信の胸中に空しく木霊するに留まった。

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